こんにちは。友成工芸です。
2024年11月、私たち友成工芸は「第12回 事業再構築補助金」に採択されました。
創業70年超、世田谷でアクリル加工を続けてきた町工場が、次の時代にふさわしい形へと生まれ変わるための大きな一歩についてブログ記事にまとめてみました。
交付申請に向けて事前に3社から見積を取り、工程や仕様を精査する中で、資材・人件費・機械価格の想定を超える高騰に直面しました。初期計画では予算内で工事を進められないことが判明し、私たちは「シンプルに、持続可能に」を合言葉に改築計画を練り直しました。
それでもどうしても捻出できないのが、未来の学びと創造の核となるものづくりのための機械や機材の費用です。個人では所有しにくい大型で特殊な加工をするものもあり高価なものがほとんどです。だからこそ、参加される皆さまと共有することを目的に、一緒に前に進むための手段としてクラウドファンディングにもチャレンジすることを決めました。
よろしければご覧ください。
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目次
世田谷で「ものづくり」の意味と課題
経営合理性だけを見れば、工場は地価の低いエリアへ移転した方がよいのかもしれません。実際、コンサルタントからは移転を勧められました。それでも私たちはこの地に留まると決めました。
世田谷は、かつてものづくりの町でした。今、当社の周りに残る工場はほとんどありません。だからこそ“ここに工場がある意味”を次の世代につなぎたい。子どもたちが放課後にふらりと立ち寄れ、学生が卒制のヒントを得られ、地域の大人が子どもと語らうイベントなどもの作りを中心に、そんな“世田谷らしい工場のあり方”を、もう一度この町に根づかせたいのです。
友成工芸は、そんな世田谷で70年続けてきた技術への信頼と実績があります。世田谷工業振興協会・教育委員会・商工会議所との長い連携の中で、中学校の職場体験受け入れや昭和女子大学との協働など、地域とともに歩んできました。2000年の代替わり後は、下請けからデザイン提案型工場へ転じ、自社オリジナルのアクリル升「mas/mas(マスマス)」を製造・販売しました。「世田谷みやげ」認定・ふるさと納税返礼品・テレビ紹介など、世田谷らしさを映すプロダクトとして育ってきました。

一方で、なにより地価の上昇著しく、この地でものづくりを気軽にやってみようという若者にとっても敷居が高い場所となっています。弊社の課題として長年の下請け構造ゆえに営業ノウハウと人的資産が薄く、職人の高齢化、技術継承の滞りなどが挙げられるわりに、そういったものづくりを志す未来ある若者と出会いにくい環境でもあるのです。またそれは工場という言葉のもつ“閉鎖的なイメージ”も関係していると思われます。
そんな私たちに光をもたらした出来事がありました。世田谷の起業家塾「ネイバースクールSETAGAYA」や東京都主催「TOKYO Re:STARTER」で出会った起業家たちから、試作の場や交流の場への切実なニーズが寄せられたのです。学びではSTEAM(※)が必修化され、ものづくりは教育のコアへ移り、大人の“学び直し”や体験教室の需要も拡大しています。まさに、工場が開くべき扉が目の前にあります。
※STEAM=科学・技術・工学・芸術・数学の5分野を組み合わせ、実生活の課題解決を通じて、新しいものを生み出す力(創造性)と、問題を乗り越える力(問題解決能力)を育む教育です。

工場直営のファブラボ×キッチン付きギャラリー「つくるわ(仮)」の取り組み
そういった背景もあり受注減・利益率低下・人材不足という三重苦を乗り越える新しい柱として、私たちは工場直営の複合スペースを立ち上げます。名付けて「つくるわ(仮)」です。
場所は工場と同じ建物の2階、現在の居住スペースをリノベーションし、1階は事務所、地下は工場という“働くリアリティ”に直結した導線で、ものづくりの鼓動が日常的に感じられる空間を構成します。
「つくるわ(仮)」の設備・空間
① デジタル工房
レーザー加工機・3Dプリンターを中心に、だれでも予約・講習を経て使えるように設計します。週末は工場スタッフが“現場目線”で操作指導を行い、安心安全で本格的なものづくり体験を提供します。
② ギャラリー
クリエイターや学生の作品、アーティストの企画展を開催します。創作の視座が交差する“見える学び”の場、地域コミュニティを担える場所にします。
③ ワークショップ
手を使ったワークショップを地域の方と計画しています。「手と道具」をテーマに、子どもたちに向けた物を企画します。
しかしながらこの構想が具体的に動き出すまで補助金の申請などからはじまり心折れかける出来事がなん度もありました。そのたびにこちらのエピソードを思い返し気持ちを奮い立たせてまいりました。
原点を思い出させてくれたひとりの中学生
それは数年前、職場体験で出会った中学2年生の男の子。最初は落ち着かず、話も聞かない。
そんな彼が、3日目にはしっかり挨拶をし、「もう1個つくりたい」と言いました。おばあちゃんに贈るため、アクリルに絵文字をプリントした作品を自ら選び、手を動かして仕上げていく。ものづくりの手触りは、彼の態度も表情も変えていきました。
「人は変われる。手でつくる体験は、たった数日でも人を前向きにする。」
その事実が、私たちの覚悟を決定づけました。
町工場を“閉じた生産の場所”から“誰もがつくる喜びに出会える場所”へ。子どもたちの「手の力」を取り戻し、学びを地域の日常に接続していく――それが「つくるわ(仮)」の存在意義です。
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クラウドファンディングで目指すこと
クラウドファンディングは、ただの資金調達ではありません。
長年お世話になってきた地域の方々から推薦・応援メッセージをいただき、その想いを“バトン”に次の支援者へとつないでいく。支援の輪=「つくるわ(仮)」を、地域のコミュニティとして共創していきます。
プロジェクトページ(準備中)
forGood「東京・世田谷発!創業70年の町工場が、“ものづくりを体験できる場所”をつくります!」
※公開時には正式URLをあらためてご案内します。
「つくるわ(仮)」がもたらす3つの変化・具体的な使い方と参加のしかた

「つくるわ(仮)」がもたらす3つの変化
- 子どもたちの“手の力”を取り戻す
絵を描き、削り、磨き、刻む。頭の中のアイデアを手で表現する経験は、創造性と自尊感情を同時に育てます。家庭環境に左右されない“手を動かす機会”を、地域の公共財として提供します。 - 町工場の技術を未来へ継承する
工場を気軽に訪ね、技術に触れ、使いながら学ぶ文化をつくる。現場の知見とデジタルが交差する場所で、技術継承を日常化します。 - 世田谷の“居場所”になる
放課後の子ども、制作に悩む学生、気分転換の社会人、第二の人生を模索するシニアなど、誰もがふらっと立ち寄れ、誰かと出会える。会話と創作が混ざり合う“まちのサードプレイス”を実装します。
(株)友成工芸代表取締役 友成冨美からのメッセージ

2023年1月、私は代表に就任しました。工場を手放すか、守り抜くか――岐路で選んだのは後者です。合理性だけでは割り切れない、世田谷に工場が“あり続ける”ことの意味に賭けたい。職人の技とデジタル機器、地域のネットワーク、そして子どもたちの好奇心。それらを束ねて、新しい世田谷のものづくり文化をつくる。「つくるわ(仮)」は、そのための“場”です。どうかご一緒に作ってください。ものづくりの喜びを、世田谷の日常へ。友成工芸は工場を、地域の学びの源泉にします。
最後に
今回は、“【開かれたものづくりの場“つくるわ(仮)”始動!①】事業再構築補助金×クラウドファンディングを利用した世田谷の町工場・友成工芸の取り組み”についてブログ記事にまとめてみました。ぜひ参考にしてください。
次回予告ですが、「つくるわ(仮)」の名前がなぜできたか?名前に秘められた想いとクラファンのリターンについて記載します。
株式会社友成工芸では、帯封付き化粧箱という細部にまでこだわった演出を通じて、受け取る方の心に残るトロフィーづくりを大切にしています。「特別な瞬間を、もっと特別にしたい」そんなご担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。もちろん、環境への配慮から「無駄な物は省きたい」というお考えも尊重しております。箱を必要とされないお客様もいらっしゃいますので、お客様一人ひとりの価値観に寄り添うことを大切に、制作に取り組んでいます。
※ご希望の用途・数量・納期をお知らせいただければ、最適なご提案をさせていただきます。
また、株式会社友成工芸ではアクリル枡もオリジナルで制作しております。個人や企業様のお祝い事、記念イベントやノベルティなどに合わせていかがでしょうか?